So-net無料ブログ作成
検索選択

捏造データによる特許は是か非か? [ 科学ニュース Old..]

ちょっと前の記事ですが、神戸大学で特許申請に伴うデータ捏造が発覚しました。
データねつ造:神戸大工学部教授、特許出願で実験行わず(毎日新聞)

特許は論文とは違い、アイデアのみでも特許は取れます(つまり上記の新聞見出しは適切ではない)。例えば、f16fightingfalconさまのブログ(http://falconseye.exblog.jp/4538623)では、基礎的な知見に立脚した推定(格好よく言えば「思考実験」とか「シミュレーション」)により特許を書くのは普通の行為だそうです。また特許の戦略としては、適当なデータをでっち上げてニセの技術の出願を行い、ライバルの目をくらますという作戦もあるそうです(Makkurikuriさまのブログ:http://makkuri.exblog.jp/3540685/)。うーむ、"でっち上げ"はどうかと思いますが、アイデアレベルの推定値は、論文への添付データと比べると"でっち上げ"かもしれません。言葉のあやと思いましょう。要するに、katsuya_440さまのおっしゃる「防衛特許」という考え方ですね(http://blogs.yahoo.co.jp/katsuya_440/34851834.html

私は「特許と論文は違い、未完成のデータを特許に載せていてもかまわない」というこれらのご意見には反対はないのです(要約がちがったらごめんなさい)。ただ「だから論文捏造と同様に本件が扱われたり、神戸大教授が処分される必要はない」という点にはこう思うのです。

"特許中に未実験のデータがあっても、それが推測値であることを明記しておけば問題ないが、そうでなければ明らかな捏造であり研究者のモラルが問われる"

たとえば読売新聞に載った神戸大学教授のコメントが、wht-flagさんのブログ(http://blog.so-net.ne.jp/wht-flag/2006-04-28)に抜粋されています。これをみると、特許中の未実験データを「推定値である」と明記していたように思えません。もし明記していれば、この教授は「推定値と明記してあり捏造ではない」と記者にも回答すると思うのです。実際、pecanfudgeさんやchemist_at_univさんの記事(リンク後述)によれば、「実験例」として未実験結果を掲載しているようです。これでは、"特許庁から何も言われなければ捏造データのままで隠し通すつもりだったのでは?"と非難されてもしかたないでしょう。

しかも毎日新聞によれば、どうやら特許出願が前提の研究開発事業に参加していたようです。山崎宏之さま(http://blog-yamasaki.com/archives/001589.html)のブログによれば、この事業化の可能性を評価する上で特許の存在は不可欠のようです。読売新聞によれば、本事業に採択され2年間9000万円の助成金が決まっていたそうです。金と捏造… 論文捏造と同じパターンです。

なおこの教授、だした特許の数は少ないかもしれませんが、特許について素人であったわけではありません。昨年3月時点では神戸大学連携創造センター長でした。全学的な組織であり、特許の取得や利用を推進するセンターです(現在は連携創造本部へ改組)。

私自身はある程度の処分は当然だと考えますが、ただし本件が辞職に追い込まれるほどの罪とは思えません。特許申請にそもそもあいまいさがあり、大学側も明確なルール作りをしていなかったと思うのです。pecanfudgeさんの記事(http://pecan.cocolog-nifty.com/fudge/2006/04/post_26c7.html)では、今後の大学と企業間の共同研究の行く末を心配されています。神戸大学にはうまい着地点を見つけていただきたいと思っています。特にぜひ、学内だけでなく特許の実情に詳しい学外の人間も本件の調査委員会に加えてほしいところです(これは論文捏造の調査委員会に対する私見と同じです)。少なくともオブザーバーとして呼んで意見を聞いてほしい。私自身、今回いろんな方々のブログを拝見し、相当勉強になりました。

最後に下記の記事を特に参考にさせていただきました。ありがとうございます。
・chemist_at_univさんの記事(http://blog.goo.ne.jp/chemist_at_univ/e/adb5b1de43d43f7d5a23ffcabedf1dbc
 本特許の原文や法律などの側面からこの問題にせまられている
・Makkurikuriさまのブログ(http://makkuri.exblog.jp/3540685/
 本文だけでなく、多数の参考となるご意見がよせられております。

追伸:今回はリンク先が多く恐縮です。トラックバックも打たせていただきました。
さて、こっからはまた蛇足です。
こんな風に新聞に「特許捏造?」という記事が載っていても、神戸大、同工学部、同連携創造本部のホームページにはいずれも何も掲載されていない。「受験生の皆さんへ お詫び」というお知らせはあるのに。この点は先日紹介した東大や阪大での論文捏造に対する各大学の対応と同様です。どうしてどの大学もこうも情報を隠そうとするのでしょうか?それで説明責任を果たした、あるいは同じ問題は2度と起きないといえるのでしょうか?企業の危機管理を学んでいただきたい。
ここまで厳しく、またしつこく神戸大学の問題を書く理由は私が同大学の卒業生だからです。

人気ブログランキングに投票


nice!(1)  コメント(10)  トラックバック(3) 
共通テーマ:学問

nice! 1

コメント 10

f16fightingfalcon

こんにちは、TBありがとうございました。当方もTBいたしました。
この問題、全く性質の異なる特許と論文に同じルールを適用しようとしたところに問題があるのではないかと思います。"特許庁から何も言われなければ捏造データのままで隠し通すつもりだったのでは?"ということも、隠し通したからと言って何も意味はありません。要件を満たしていれば特許として認め、あとは当事者間の交渉に任せるという事が現在の特許庁のスタンスだと思います。「隠し通せてしまう」という事は「何の役にも立たない」というのと同義語です。特許は役に立って初めて意味を持つ「財産」であって、そこが研究者の業績として積み上げられる論文と本質的に違うところだと思っていますが、いかがでしょうか。
by f16fightingfalcon (2006-05-05 10:17) 

W.P.P.

初めまして。
この問題、単に、国からのお金が絡んでいたから、うまい具合に、標的に選ばれたとしか思えません。個人のお金でやっていたら、誰も、見向きもしませんて(特許とは、そういうものです)。
大体、「特許」の本質を理解していれば、「ねつ造」が成立するかどうかなどは、わかることです。実験で得られた結果を、ねじ曲げれば、それは確かに「ねつ造」になるでしょうが、そうではないわけですし。
処分対象となるような案件であれば、まず、特許庁が、成立させません。それとも、これは、特許庁も処分されるような案件だったわけでしょうか。弁理士が関わっていたら、その方も、何らかの処分をされるべきなのでしょうね。
神戸大学は、そこまで、きちんと対応されているのでしょうか。そこまでやれば、さすがに、同大学の行く末が恐ろしいので、まともな出願者は激減するでしょうが。
父が同窓生なので、そんな事態は、起こらないで欲しいなと、思っています。
by W.P.P. (2006-05-05 11:45) 

chem@u

TBありがとうございます。
未実施のデータを推定値と明記して特許にする、・・・取得する権利範囲を狭めるような気がしますが。権利取得もしくは他者事業の妨害を目的とする場合、良心的にやるなら少ない実施例から色々と話を膨らませる、もしくは、確信犯で推定値も実施例に入れてしまう、のどちらかしか無いのではないかと。
今回の件については、騒いだもの勝ちってのがあるので、大前教授の立場が回復することはなかなか難しそう。
波及効果で、GW明け、うちの大学でも出願特許の再点検とか色々あったら面倒だなあ。
by chem@u (2006-05-06 10:27) 

かっぱ

神戸大学に勤める私は他人事のようにコメントしてはいけないのだと思いますが、はっきり言って理解不能です。
ちなみに、発覚後、私の周辺レベルでは特に大きな話題にもなっていません。特許と関わっている教員や部署では、何かあったのかもしれませんが。
by かっぱ (2006-05-06 13:03) 

Pecan

TBありがとうございます。言いたいことはブログで述べましたので、特に付け加えることはありませんが、大学として出願内容のポリシーは定めているのかという点については問題として提起しておきたいと思います。
独立法人になってから知財部などを置く大学も多く、企業と共同出願した場合、企業に不実施補償(共同出願した企業が特許のライセンス相当額を大学に支払う)を求めるというようなポリシーは決めているのをよく見かけます。しかし、特許の世界は、不実施補償のように、大学側にとって都合の良いことばかりではありません。特許の世界における慣習とうまく折り合いをつけた着地点を出願のポリシーとして定めていただかないと、今回のような問題は今後いくらでも起こりえます。
by Pecan (2006-05-06 19:02) 

Pecan

上で出願のポリシーを定めるべきだなどと書きましたが、MANTAさんの記事中に「特許申請にそもそもあいまいさがあり、大学側も明確なルール作りをしていなかったと思う」とあり、すでに問題としてあげておられました。失礼いたしました。
by Pecan (2006-05-06 19:08) 

MANTA

- 皆様、コメント&TB、ありがとうございます。お返事、とてもここには書ききれませんので追加記事を立てました。
http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2006-05-06
以下は個別に簡単なお返事を。

f16fightingfalcoさん、追加記事に書きましたが論文と特許の違いは大学側には問題ではないと思うのです。いかがでしょうか?

W.P.P.さん、「標的」という言葉は推測をうんで面白い?のですが、ここではそれは抜きにして考えますね。特許庁がこれをどう扱おうが、大学側には関係ないのです。追加記事を参照下さい。でもおっしゃるように大学としては本件に係わった企業側のコメントや弁理士の方のコメントも必要ですよねー
しかしお父さんが出身校だと、こんな不明瞭な大学の対応は嫌ですよね(私はすごく嫌!)
by MANTA (2006-05-06 21:31) 

MANTA

- chem@uさん、コメントありがとうございます。恐縮です。
ただ、推定値と書くことで取得する権利範囲を狭めることは仕方ないと思うのですが。だって実験してないのですから(苦笑)。
GWあけに仕事が増えないよう祈っております。

- かっぱさん、どうもです。本件、たしかに大騒ぎすることではないのでしょう。でも我々は認識しないといけないと思うのです。で、シツコク追加記事を書いてます…

- Pecanさんのおっしゃるように、大学や研究所は特許に対する認識が甘いとおも思います。それと「出願のポリシー」ほんとチャンとやってほしいです。

しかし皆様どうやら、特許の専門家のようで、私程度が意見していいのかな…?
by MANTA (2006-05-06 21:40) 

wht-flag

お久しぶりです。

ちょっと前の記事になってしまってましたが・・・。
雑感程度に書き留めた記事だったのでTBまでして頂いて恐縮です。
感想程度で申し訳ないのですが、あまり深いコメントはできません。
ココやTB先等を読んで勉強になりました・・・ホントに。
みなさん凄いなぁ・・・。
by wht-flag (2006-05-23 03:45) 

MANTA

- お久しぶりです~ コメントありがとうございます。
TB先の皆さんは凄いですね。特許のなんたるか、について勉強になります。ただ技術者の皆さんは「国ベースの大学や研究所の信頼性」という面にはあまりケアを払われないようですので、そのあたりの認識の違いが「特許捏造の是非」論でねじれてしまっているように思っています。まあそもそも「大学や研究所に信頼性はあるのか?」ということなのかもしれませんね(苦笑)
by MANTA (2006-05-23 12:37) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 3

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
メッセージを送る