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なぜ質問にこたえるのか? [▼Q&A]

先日、当ブログ読者からの「どうして海の波はたつのですか?」という質問へ
答えたときのこと。HMSさんからこんなコメントを頂いた。

「MANTAさんはこういう類の質問が寄せられた時はどのようにされていますか?」

このブログは私個人の趣味サイトなので、質問は正直言ってムッチャ嬉しい。個人サイト
では第三者からの反応がないのは寂しいし、質問を頂けるとサイト運営の励みになる。
なので今後も私個人ができる範囲でいろんな方からの質問に答えていきたいと思う。

さて、これは私人としての「私」。
研究者として働いている時間、公人の「私」はこうはいかない。
個人の方などからメール・電話などで質問を頂いた場合は、研究所の広報部門へ
お問い合わせ頂くようお願いしている。研究所内でそういうルールになっているのだ。

如何にもお役所的対応で恐縮だ。しかも広報部門に問い合わせ頂いても、結局は
私のところに回答要請が来ることもしばしば。質問をする方もされる方も正直面倒くさい。
しかしこのプロセスは3つの理由で必要だ。

その1:研究者個人が答えたとしても、世間としては「研究所の公式見解」となる。
無責任な回答は研究者個人も研究所もすべきではない。

その2:研究所として質問へ返答した実績を作ることができる。研究者一人一人が答えて
いては、研究所としてどの程度の社会貢献や広報活動をしたかが分からない。

その3:広報部門が動くことで、社会貢献や広報活動が「研究所や研究者の仕事である」と
研究所内外にしっかり位置づける。

最後のその3については「大学や研究所が市民からのちょっとした質問に答えるなんて当然では
ないか?」と、研究者でない方は驚かれるかもしれない。確かにそれが研究者集団が社会からの
要請へ応える方法の一つだろう。しかし例えば大学では、研究に関する質問に答える部署がない
場合が多い。あったとしても、先生が直接答えることが多いようだ。これは先生の業績にも大学の
業績にもカウントされない。つまり、仕事というよりもボランティア作業なのである。しかしいつまで
ボランティア精神で続けられるのだろうか?あいまいな広報体制だと、「質問に答えるのは私の
仕事ではない。研究時間の損だ。」と考える研究者が増えても仕方ない。

質問対応をする部門を維持する予算がないという意見もあるだろう。しかし、専任の広報担当者
を雇うかどうかは重要ではない。市民からの質問に答える体制があるかどうかが重要なのだ。
例えばこんな本がある。

Q&A 火山噴火―日本列島が火を噴いている!

Q&A 火山噴火―日本列島が火を噴いている!

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2001/04
  • メディア: 単行本

この本は火山学会に寄せられた質問に学会員が答えていくという、火山学会の人気企画(?)
の書籍版である。私は火山学会員でないので実状は存じないが、どうやら学会の広報担当者
数名が学会員から専門家を選んで回答要請をしているようだ。それが1冊の本にまでなった。
すばらしい社会貢献体制だと思う。

「素人からの質問に答えることなんて、どうでもいいじゃないか。社会貢献や広報活動はもっと
別な形でやればよい」という研究者側の意見もあるかもしれない。しかし、研究者に質問をして
みようと思う市民は、科学のアクティブユーザ・パワーユーザといえる。このようなアクティブ
ユーザにどう対応するかを多くの一般ユーザは注視しているはずだ(例えば私は出張先のホテル
をネットで選ぶ場合、宿泊客からの質問・意見へのホテル側の回答を見て参考にしている)。
大学や研究所が市民からの質問にきちんと対応することは、一般社会と科学技術の隔たりを
縮める効果が大きいと思うがいかがだろうか?

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ちなみに研究所では広報部門の設置は一般的のようだ。例えば当ブログでも、ラドンを用いた
地震予知に関して、放射線医学総合研究所広報室へ問い合わせたが非常に丁寧にご返答頂いた。
●研究所へのお手紙
 http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2007-02-19
ありがたいことである。先日、とある会合でその研究者のお一人にお会いすることになった。
何と言ってご挨拶すべきか相当困ったが、いろいろお話を伺うことができた。
問い合わせのメールから始まる人の繋がり。不思議だが心地よいと私は感じた。


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masamasa

MANTAさんのブログを見て、海に興味や関心を持ったり、海に関する職業に
ついたりするきっかけになったら、素晴らしいですね!
プロの方に優しく、易しい解説をしていただけると、質問者以外の人にも
分かりやすいです。
このブログを通じてステキなウェイブが広がりますように!
by masamasa (2007-08-29 16:48) 

みきぱぱ

MANTAさんこんにちは
9月1日放送のNHK「サイエンスZERO」は
「海の不思議を解きあかせ」だそうです。
過去に放送されたものを再構成したものなので、
見逃していた方は是非どうぞ。
http://www.nhk.or.jp/zero/schedule/index.html

JAMSTEC広報におられた山田さんには大変お世話になりました。
今年春退職されたそうで、大変残念です。
by みきぱぱ (2007-08-29 17:16) 

MANTA

いつも情報ありがとうございます。
以前にお教えいただいた浦先生ご出演の回、録画していたのを先週
やっと見ました。「ロボット帝国」発言に驚きましたよ!
今回のサイエンスZEROにも水中ロボットが再登場するでしょうね。

山田さんはご退職されました。私もお世話になった一人です。
ただ研究所の方では、そんな海のキャリアに満ちあふる退職者の方々
の助けを借りて、ある企画を検討中とのことです。
ひそかに楽しみにしています。
by MANTA (2007-09-01 22:09) 

HMS

 お取り上げ頂き恐縮です(滝汗)。大筋で同意見なのですが以下に現状と言いますか疑問をば。

>市民からの質問に答える体制があるかどうかが重要

 その通りです。ただしご提示いただいた火山学会のように学会内または国研・大学で他分野の研究者や事務方とその辺を摺り合せた事例がいくつあるのでしょうか?中には海洋学>地球物理という態度を隠そうともしない方とか、「勝手な研究ばかりしている」と疑って出張やイベント・集会を所長が認めたにもかかわらず、頑として認めないような事務方がいますから・・・

>社会貢献や広報活動はもっと別な形でやればよい

 そのような事を言って(行って)いると先般行われた行政減量・効率化有識者会議での某委員のように、

 「(公的研究機関について)唯一の学者という立場で、はっきり言わしてもらう。…金がほしいと言っているのは、自分の雇用のために言っていることでしかない。技術がなくなるという意見があるが、技術を外国から買えばすむ話であり、ナショナリズムに基づく意見でしかない。…学者は中程度の金があると結果がぐっと上がるけど、今のように金が旺盛になると、金に見合った成果などは望める訳がない。」

 という不見識(大気科学や地球物理学などは、成果はオープン。ただし手法や生データ収集は「ナショナリズムに基づいて」閉鎖的・・・というのはご存知かと)極まりない人間に叩かれます。法学関係のボッタクリの最たる代物というべき法科大学院でメシ食ってる人間にだけは言って欲しくないのですがww

@山田さん

 先日納涼祭で久々にお会いしました。お元気そうで何よりです。企画(某塾)ですか・・・面白いです(海洋と銘打った資格って技術士(船舶・海洋)ぐらいしかないですから・・・)し、実現していただきたいのですが、認定機関がJAMってのは・・・どうなんでしょうね??
by HMS (2007-09-02 12:36) 

MANTA

HMSさん、いつもコメントありがとうございます。

>火山学会のように学会内または国研・大学で他分野の研究者や事務方とその辺を摺り合せた事例がいくつあるのでしょうか?

一般的にはなりつつあるとおもいます。私の関連する学会では
アウトリーチ関係は賑やかになりつつあります。

>技術を外国から買えばすむ話

あまいですよねぇ。。。HMSさんもご経験あるでしょうけれども、
海外から鳴り物入りで輸入した最先端の装置が、日本できちんと
動かないことって多いんですよ。私も何度も泣かされました。
海外メーカはきちんと対応してくれなかったり、対応してくれても
時間と手間とお金ばかりかかったり。
宇宙関係でも、火星探査機「のぞみ」が米国製バルブのせいで酷い目に
あったことがありましたが、知らない人は「買えばいい」といいますね。

そんなことを考えても、ちょっとした科学の質問にできるだけ答え続け、
また一般向けの科学情報をできるだけ発信し続けたいと思う次第です
by MANTA (2007-09-02 13:52) 

HMS

MANTAさん、お返事ありがとうございます。

>アウトリーチ関係は賑やかになりつつあります。

 あ。失礼しました。ちゃんとやっているところはやっているんですねぇ・・・海洋関係だけなんですかね?少ないパイを取り合っている恥ずかしい連中は・・・

>HMSさんもご経験あるでしょうけれども

 ううっ。私の人生はそれに8割方費やされています(悲涙)。不幸なのは自分等だけじゃないことが判るだけでも充分精神的な平穏を(笑)

 先日もある装置の導入で電子装備品には、ライセンス生産品(=Black Box)が数多く入っていたため、ライセンス情報アクセス料、技術料、部品料、技術者派遣料、組立料及び人件費が絡む、ライセンス元から見ると莫大な利益を生むビジネスになってしまいました。何となく防衛特機関連で水増し請求しちゃった理由が判ったような・・・(苦笑)。

>海外メーカはきちんと対応してくれなかったり、対応してくれても
>時間と手間とお金ばかりかかったり。

 この辺の理由は他の方にも向けることにして(苦笑)。

 えっと上記のような場合、海外(特に米国)から導入した装置、機材に何か不具合があると、その不具合を英語に翻訳して各種手続きをして「文書で」問い合わせをかけて、それから数週間~数ヶ月たってからやっと、

「それ、たぶん俺のところじゃないから知らん」

 と「メール」で素っ気無い返事が返ってきます。ただちに「お前が悪い」ということを証明するために徹底的に調査して「報告書」の形で送りつけます。これ、当然「時間&費用全部自腹」です。本業やってるヒマがありません(涙)。

 そうでなければ「ライセンス生産品(=Black Box)だから情報開示できない。外して送り返せ」の一点張り。技術情報提供や仕様書開示など間違ってもしてくれません。代替品など要求したら「費用1万ドル、納期半年以上」と平気で言ってきます。何度リバースエンジニアリングかけて偽造部品作ったことか・・・(涙)。

 それらを嫌がって開発元の常駐職員のハケンなんか依頼したら「1人×1万ドル×1週間」という歓楽街のボッタクリバーなんか比較の段じゃない要求をされた上に「威張り散らす(=「ともかく俺様の言うとおりにしろ」)くせに何の能力も無い人間(=エース級なんか間違ってもハケンされません)」が来ます。二回線しかない配線を逆に付けやがりました(涙)。

 というわけで、米国製電子機器ならばできる限りMIL-STD 品を使用したもの(他にロクな業界標準が無い)。機構やシステム等はきちんと文書化された標準品を使用させる事が是が非にでも必要でしょう。そこまで追い詰めないと上記のようにまともに対処してくれないという米国の企業体質も問題ですけど。

>知らない人は「買えばいい」といいますね。

 この会議、文系の人間だけでしたから・・・(困)
 
by HMS (2007-09-02 17:06) 

MANTA

- 詳しい状況のご説明、ありがとうございます。
私はある意味慣れっこ?ですんで苦笑しつつ読ませていただきましたが、
某文系の委員の方を含め、海外からの技術輸入の難しさをご存じない
方々はHMSさんの上記コメントをぜひお読みいただきたいと思います。
これが真実です。どの国も他国の科学事情なんて知ったことではない
のですよ。お人好しの日本人はいいように扱われるだけです。
by MANTA (2007-09-03 08:07) 

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