So-net無料ブログ作成

今回の地震の科学的な謎 [ 電磁気で地震予知]

連載「電磁気で地震予知」の続き、今回はこの巨大地震発生の謎を考える。
今回の地震は「アスペリティー」と呼ばれる、プレート境界で固着していると
思われる部分が複数同時に割れたことにより、大きな揺れと津波が広域を襲った。
謎とは「なぜアスペリティーは連動して破壊したか?」である。

例えばアスペリティー連動型の巨大地震が想定されている西南日本の場合、
沖合のプレート境界の様子を漫画で描くとこんな感じである。

nankai.jpg
立体的に描いたのでちょっと分かりづらいが、茶色いのが海洋プレート(フィリピン海プレート)。
半透明の灰色の「西南日本」で、沈み込むプレート境界上の様子を青や赤で模式的に示して
みた。西南日本の沖合では、微小な地震活動は平常時はほとんど見られない(※1)。この
ことから、普段はほぼすべっておらず、巨大地震発生の時に一気にずるっとすべるプレート
境界=アスペリティーが複数個、隣り合っていると思われている。1つのアスペリティーが
すべると(アスペリティー間の隙間がないため)すぐ隣のアスペリティーも一緒にすべって
しまう可能性が高い。このため西南日本では、アスペリティー連動型の巨大地震へ注意が
向けられてきた。一方、アスペリティーの上端や下端では大きな地震は起きず、むしろゆっくり
すべる地域があることも知られている(※2)。

一方、東北地方太平洋沖合のプレート境界の様子を漫画で書くと、こんな感じだろう。

tohoku.jpg
東北沖のアスペリティーとアスペリティーの間には、(小さな地震も伴いながら)
ゆっくりとすべっているプレート境界部があるらしいことが分かってきた(※3、※4)。
「非アスペリティー」と呼ばれるこの部分は、まるでプレート境界上の「緩衝材」のよう
であり、アスペリティーがズルっとすべったときは、クッションのような非アスペリティー
で止まるのではないか?との期待を抱かせる。

しかし今回の地震では非アスペリティー地域を飛び越えて隣のアスペリティーが
すべり始めた。 あれ? どういうこと? おんなじアスペリティーでも1つだけすべって
地震を起こしたり、複数すべってしまう超巨大地震になったり。なんでそんな違いが?
っていうか、そもそもアスペリティーとか非アスペリティーとか(カタカナばかりだけど)、
その実態ってなに? なにがプレート境界のすべりやすさを決めてるの?
っていうか、なんで東北沖と西南日本沖では、アスペリティーの分布に違いがあるの?

実はこれらは地震前から謎ではあったのだけれども、あらためてクローズアップ
されることであろう。

続きますよ。

<以下は補足資料>
※1:南海地震震源域のセグメント構造と長中期的発生予測
 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu6/sonota/06052211/h17houkoku/2001.htm
 ただし最新の海底地震観測結果では、紀伊水道沖の一部では微小地震が起きている。
 ・スラブ内地震とプレート境界地震の相互作用(東大地震研、平成21年度)
  http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/YOTIKYO/OpenReport/H21/html/1418.html
 なお東海・南海・東南海地震の連動は過去の歴史から見て可能性が高いと言える。
 ・東南海・南海地震対策(総務省消防庁)
  http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h20/h20/html/k1621200.html
 1944年の東南海地震と1946年の南海地震の震源(破壊開始点)は潮岬を境にして
 隣り合っていたと考えられており(上記地震研サイトの最初の図の☆と★)、この場合は
 数値シミュレーションから2つの地震が連動発生する可能性が示唆されている。
 ・地震発生と波動伝播の連成シミュレーション(防災科研、平成21年度)
  http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/YOTIKYO/OpenReport/H21/html/3003.html
※2:沈み込むプレート境界の浅部から深部にいたる3つの異なる「スロー地震」の連動現象の発見
 http://www.hinet.bosai.go.jp/press/NIED_press.101210/
※3:地震時滑りと非地震性滑りの相補関係
 http://www.geog.or.jp/journal/back/pdf112-6/p828-836.pdf
※4:相似地震解析による1994年三陸はるか沖地震の余効すべりの時空間変化の推定
 http://www.aob.geophys.tohoku.ac.jp/~uchida/kenkyuu/02godosanrkposter.pdf

nice!(5)  コメント(2)  トラックバック(2) 
共通テーマ:学問

nice! 5

コメント 2

LH2

前回の記事でのハーバード大学のアニメーションで個別に活動している領域が、アスペリティなんですね。
緊急地震速報の発信記録を見ると、第一報から時間が経つほどどんどんマグニチュードが大きくなっているのは、速報中に断層破壊が進んだのかなと思うのですが、こういう場合の地震波はいろいろなアスペリティからの揺れの合成波になって、震度予測など複雑になりそうですね。

南海トラフはほぼ全域が巨大なアスペリティとか、東北は分かれているとかは、NHKスペシャルMEGAQUAKEでも紹介されていました。
プレート境界ではない阪神大震災も、詳しく調べるとアスペリティが二つ、という話しも紹介されていたのですが、よくしらべるとこういう事って多いのかもしれませんね。

それにしても、昔からNスペの科学ものはそうでしたが、かなりマニアックなところまで突っ込んで説明、という番組はほとんどないので、Nスペは貴重です。
すごく科学リテラシになっているとおもいます。(私自身、科学を目指すキッカケになりましたし)
by LH2 (2011-04-08 07:08) 

MANTA

>こういう場合の地震波はいろいろなアスペリティからの揺れの合成波に
>なって、震度予測など複雑になりそうですね。
LH2さん、その様子を東京大学地震研究所のサイトで見ることが出来ます。
http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/
※ここの「地震動分布から直接見る震源断層の破壊過程」
観測された地震記録からも、紫色→水色→赤色というように、時間が経つに
従って地震波の出てくる場所が移動している様子が分かります。

>南海トラフはほぼ全域が巨大なアスペリティとか、東北は分かれている
>とかは、NHKスペシャルMEGAQUAKEでも紹介されていました。
お恥ずかしいことに、録画しましたが未だ見てない。。。
DVD、どこに保存したかなぁ。。。

by MANTA (2011-04-10 08:14) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

メッセージを送る