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これで当分、原発は動かせない [▼連載【資源エネルギーを考える】]

私自身は原子力発電所は技術的には稼働可能だと考えている。
福島第一原発がいまもって事故収束の見通しが立たないのは、地震の揺れのせい
ではなく、津波による冷却電源損失である。同様な意見が下記でも述べられている。
●固有リスクとシステマティックリスク(池田信夫Blog)
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51724233.html
ただ私は池田氏ほど楽観的ではない。津波に対して抜本的な対策はなかなか大変で、
すべての原発が稼動可能とは思えない。しかし、いくつかの原発は可能であろう。

一例が女川原子力発電所である。よく知られているように、震源地に最も近いこの原発は
地震・津波で壊れなかっただけでなく、一時は町民の避難所にすらなった。
●原発、明暗分けた津波対策 女川は避難所に(産経新聞)
 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/498844/
5538154327_1ee3996f8e.jpg
女川原発 by -osada (protected by CC License)

これは偶然ではない。女川原発はこのような大津波を想定していたのだ。
●女川原子力発電所における津波に対する安全評価と防災対策(東北電力)
 http://www.jnes.go.jp/content/000015486.pdf
上記は原子力安全基盤機構が2007年12月に実施した「地震・津波に対する原子力防災と
一般防災に関するIAEA/JNES/NIEDセミナー」での講演資料である。2007年の時点で
東北電力はすでに869年の貞観地震や1611年の慶長地震時の仙台平野の津波被害の
存在を把握しており、それも含んだ津波災害の想定を行っている。1980年着工のこの原発
が海面から14.8mの場所に建築されたのは先見の明かたまたまか、いずれにせよ、
2007年時点での津波評価は無駄ではなく、むしろ役立った。

実はこれは結果である。上記の想定では、津波の波高は最大9.1mであったが、上記と別の
産経の記事によれば津波の高さは13mであったらしい。しかも地震で地盤が1mほど沈下
したので、わずか80cm差で津波を免れたに過ぎない。ただし結果とはいえど、貞観・慶長の
どちらの津波も想定していなかった福島原発の運命とは大きく異なっている。
onagawa.jpg
上記の東北電力資料より。
津波での水位上昇だけでなく、水位低下時も検討されていた。

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女川原発自体は地震による被害確認にまだ時間がかかり、再稼動は当分先だろう。
言いたいことは、新たに(早急に)各原発の津波予測をしなおせば、どの原発を動かすことが
できて、どの原発は抜本的改修まで停止しなければならないか冷静に判断可能ということだ。
しかしご存知のとおり、電力会社自身が原発再稼動をぶち壊している様子が明らかとなった

●<九電>「原発賛成」やらせメール 関連会社に依頼
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110706-00000083-mai-soci
九州電力が県民向け説明番組に再開を支持する電子メールを投稿するよう、関連会社に
依頼していたらしいのだ。なかでも情けないのが、九電からの依頼メールの次の一文。
”会社のPCでは処理能力が低いこと等から、是非ご自宅等のPCからのアクセスを御願い致します”

文面通り取ってはいけない。上記Yahooニュースでは次のように書かれている。
「番組にメールする際は九電関係者と分からないよう、自宅などのパソコンからアクセス
 するよう指示していた」   ようするに九電および関連会社のパソコンから、番組宛に
メールを打ったり、番組へアクセスするとドメイン名などで会社からのアクセスと判明して
しまうため、自宅から一般視聴者を装ってアクセスせよとの依頼である。
科学技術の真骨頂の原子力発電所運営をやっている電力会社が、PCのスペックが
低いなんて、曲りなりにも「技術の低さ」を言い訳に使う、この頭の悪さよ。

女川原発の例のように原子力発電所は決して危険極まりないものではない。リスクをきちんと
評価し、原子炉を管理・運営すれば(冷やすのに苦労するほどの)存分なエネルギーを提供して
くれる、まさにエネルギー工場だ。いまの一番の問題は、それを任せてきた会社が極めて信用の
おけない人達で形成されていた事実である。優れた技術が泣いている。情けない。

電力会社が電力会社なら、政府も政府である。次回へ続けます。

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追記:
●九電やらせメール:複数の役員関与 組織ぐるみ疑い強まる
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110708k0000e040089000c.html
どうやら九電の組織的な世論誘導であるようだ。これでもう当分原発は動かせない。
いま動いている原発も止めるハメになるかもしれないね。
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コメント 5

乾物屋

>優れた技術が泣いている。情けない。
今回ばかりは一度押したnice! を取消しました。MANTA さんに対してではありません。自分もかかわりのあるこの業界にでありますm(__)m
by 乾物屋 (2011-07-08 20:27) 

MANTA

乾物屋さん、記事中にも書きましたが、原子力発電所は決して危険極まりない
ものではありません。ちゃんとしたリスク評価と管理運営を行うことが必要です。
また必ず原子力が必要なときが来ると私は思っています。
by MANTA (2011-07-09 05:38) 

yao

私は 30-50年後をめどに脱原発派です。
現在の原発とより安全性の高い3.5世代でしたっけ?は安全性を確保し、政府が担保し運転。
ストレステストは賛成だが、なんであのタイミング??また、テスト内容も決まってないお粗末さ。
はぁ~。

この30年の間に超小型水力発電、LNG発電、地熱発電(温泉地では、温泉の枯渇が心配で地元業者が反対しており、なかなか前に進まないと聞きました)で電力を確保する方向性出してもらいたい。
もちろんこの間にポスト原発のエネルギー問題を解決していただきたい。
これぞ科学の力です。できればメタンハイドレートの上手な採掘方法を研究して頂きたい。そうすれば、LNG発電所も小規模改造で対応できるのでは?と思っています。

私は太陽光発電には発電効率、安定供給の問題で「?」が付いてきます。

MANTAさん。太陽光発電で本当に効率的にできるかご存知ですか?
いろいろ探していますが良いものが見当たりません。どこかにソースあればご紹介ください。

しっかり電力がないと産業も海外へ流出してしまいそう。働き口がなくなれば、国力も治安も悪くなる。

原発は今は安全かも知れませんが、やはり人類にはプルトニウム239の半減期23,000年を管理できないと思うから。 


by yao (2011-07-12 11:20) 

azumashikunekara

「環境問題」を考える(http://www.env01.net/
私にはちと難しいですが、原発や自然エネルギーの
夢は打ち砕かれます。
by azumashikunekara (2011-07-12 18:16) 

MANTA

yaoさん、エネルギー問題ってほんと、科学技術に経済面に、我々の生活にと
ほんと多岐に渡る事柄を巻き込んでいますね。すこしずつ解説していきたい
(というか私も勉強!)と思っています。ひとつだけ、太陽光発電は切り札には
成り得ないと思います。

azumashikunekaraさん、先日NHKで新エネルギーに関する番組を見ました。
推進派と慎重派が議論していましたが、互いにまず「新エネルギーありき」or
「既存エネルギーありき」の議論なので、まったくかみ合っていません。私は
幸い、どちらの立場でもないので、できれば冷静に分析・評価してみたい
と思っています。
by MANTA (2011-07-13 08:27) 

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