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国内のメタンハイドレートは「何年分」か? [▼連載【資源エネルギーを考える】]

新たなエネルギー資源として注目を集める「メタンハイドレート」。
別名「燃える氷」と呼ばれており、メタンと水からできた固体です。

去年の夏に報じられたメタンハイドレートの掘削が今日、遂に始まりました。
●燃える氷「メタンハイドレート」採掘へ
 http://www.mbs.jp/news/jnn_4953280_zen.shtml
 「メタンハイドレートが日本の海の下に、日本の天然ガス消費量の100年分
 埋まっていると言われている。まさに夢の資源なんです」(上記MBSニュースより)
●メタンハイドレート、渥美沖で採掘へ…海底は初
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120214-00000353-yom-bus_all
 「(今回の掘削海域周辺には)日本で消費される天然ガス13年分の量が
 埋蔵されているという。」(上記Yahooニュースより)

日本全体で100年分、今回の海域周辺だけでも13年分のエネルギー資源、これが
メタンハイドレートが注目される最大の要因であり、開発が期待される理由です。
…しかしこの「100年」や「13年」という見積もりは正しいのでしょうか?

まず「100年分」については、官民学共同のメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム
(MH21)の下記ページホームページにもかつて明記されていました(現在はなし ※1)。
●メタンハイドレートの説明 - どこにどれだけあるのか?
 www.mh21japan.gr.jp/2005/index3.htm
 (以下引用)「1996年の論文で発表された日本周辺のメタンハイドレート資源量は、
 フリーガスも含めて7.35兆m3であり、日本が消費する天然ガスの約96年分である。」

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でも、すべてのメタンハイドレートを資源として利用可能なのでしょうか?
まず、上記のMH21のサイトでは、メタンハイドレート下ガス(フリーガス)量を2.70兆m3
と勘定していました。資源量の約4割を占めるフリーガス、しかし実際は無いようなのです。
そもそもは、メタンハイドレートは氷の固体=ならばガスを通しづらいのではないか?だったら
その下にはメタンガスがいっぱい溜まっている?と期待されていましたが、実際に掘って
みてもフリーガスは出ませんでした。例えば下記資料にもフリーガスの記述はありません。
●東部南海トラフのメタンハイドレート資源量評価結果について(経産省)
 http://www.meti.go.jp/press/20070305005/20070305005.html
 ※詳しい資料はこちら(東部南海トラフのMH資源量評価)
 http://www.mh21japan.gr.jp/pdf/toubunankai_MH-2007.pdf

ice.jpg
「これが燃える氷?」 ← あんこちゃん、それはただの氷山だよ。

しかも、上記の東部南海トラフの結果(PDF)では、メタンハイドレートは「濃集帯」と「賦存層」に
それぞれ50%(5.7千億m3)ずつ分布するようです。なぜわざわざ2つに分けているのでしょう?
後者に含まれるメタンハイドレートは薄く広がりすぎていて、回収にお金と手間がかかるので
資源としては使えないのではないか?という思いがあるからです。つまりメタンハイドレートの
半分位しか資源としては価値がないのだと思います。ちなみに、まさにこの地域を掘削し始め
たのですが、資源量「13年分」との報道は濃集帯+賦存帯からの見積もりですので、実際は
半分の「6.5年分」くらいでしょう。

以上のように、フリーガスがなく、濃集帯だけが資源として使えるとすると日本の
メタンハイドレートの総量は(7.35兆m3-2.70兆m3)÷2=2.3兆m3
これは当初見積の約30%なので、「100年分」は「30年分」に減るでしょう。
さらに近年のメタンガス需要増は、この年数をもっともっと短くします(※2)。

…MH21のサイトから日本周辺の推定資源量が消えた理由もわからないでもないです。
かつて「100年分」を見積もられた研究者からお話を伺った際も「数字が独り歩きしている」
とおっしゃってました。ただし、上記はネガティブな見積もりになりましたが、実際は何年分
になるかわかりません。1996年当時よりもメタンハイドレートの発見・開発技術は向上して
います。今回の「愛知県沖でのメタンハイドレート掘削」は、まさに適正な資源量推定の為の
第一歩なので、「100年分」などという数字だけを鵜呑みにせず、温かく見守りましょう!!


ってことで、がんばれ「ちきゅう」!!(写真はこちら

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おまけ(興味のある方、どうぞ)
※1)過去のページは「Web Archive」というサイトで閲覧可能。タイムマシーンですね。
※2)もともと「100年分」自体が、すべて1996年当時のお話。下記の資料に基づけば、
1996年の日本の天然ガス消費量は600億m3だったけど、2010年には950億m3(!)に
増えている。なので、30年÷(950/600)=約19年分になる計算だ。だいぶ減った…
●日中印の天然ガス消費量の推移(前田高行論稿集)
 http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-95dGasConsumpInJapanChinaIndia.pdf
●BPエネルギー統計レポート2011年版解説シリーズ:天然ガス篇(前田高行論稿集)
 http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0189BpGas2011.pdf
また、たまに「日本はメタンハイドレートだけであと100年は戦える!」という、マさんのような
誤解をされている方がいる。あくまで「日本が消費する天然ガス」の量で計算したときに
100年→30年→19年(いまここ)なわけなので、総エネルギーで考えるともっと短くなる。
先の記事に紹介した図にあるように2010年現在、日本の1次エネルギーの中で
天然ガスが占める割合は20%なので、もしも日本が日本周辺のメタンハイドレートだけで
生き延びよう!とおもったら、19年÷ 5=約4年間は生き延びられるよ。
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Working Dad Oversea

ご無沙汰~。

今の日本はホント大変な状況だから、Manta さんのこういう投稿って、非常に貴重だね。
ずいぶん以前にも同じ話題を取りあげていたと思うけど(温暖化ネタだったか?)、メタンハイドレートは今や日本の救世主的存在なみたいだから、その風潮を冷静に批評できる専門家の意見は、ほんと大切だね。VISA の宣伝じゃないけど Priceless だね。

by Working Dad Oversea (2012-02-16 00:23) 

MANTA

Working Dad Overseaさん、お久しぶりです!
上記は(某SNSで)以前にかいた文章を焼き直したものです。
(あのときにもコメント、サンキューです)
数字というものは、とかく一人歩きしがちですが、
その根拠も考えて欲しいなぁと科学者としては思っています。
by MANTA (2012-02-16 07:59) 

azumashikunekara

ん~・・・。
テレビで青山何がしが言ってる「メタンハイドレート100年分」は過去の話なわけですね。
by azumashikunekara (2012-02-17 11:17) 

MANTA

青山さんですね、お会いしたことはあります。
おそらくは「1996年の見積もりで」と前置きをされているのだとは思います。
ただ単に「100年分」と言っている専門家や評論家がおられたら、資源に
ついての見識が浅いと言わざるを得ません。
by MANTA (2012-02-17 17:39) 

azumashikunekara

お久しぶりでございます。
MANTAさん、そろそろ関電の「15%節電協力の暑い夏?」がきますね。
最近、青山氏の積極的メタンハイドレート推進論の必死さに少々うんざりしておりますが(彼いわく、自分の金儲けの為ではなく日本のエネルギー政策の為というのがとても偽善者っぽいんですが・・・)、彼の言う太平洋のメタンハイドレート埋蔵量よりも日本海側の方が埋蔵量も多く、なおかつ取り出しやすいという情報です。
なんでも海底からメタンガスが毎日のように噴出してる(年間で積算すると日本が一年間使う天然ガスと同量程度)とのことで、それをやると資源エネルギー庁長官いわく世界のエネルギーバランスが壊れるからやらないんだという事だそうです。この件はご存知でしたか?
海の研究者であるMANTAさんのご意見をぜひ伺いたいのですがいかがでしょうか?
by azumashikunekara (2012-06-19 18:58) 

MANTA

azumashikunekaraさん、台湾に行っておりましたのでお返事が遅くなりました。
(メタンハイドレートの調査でした)

ご質問の日本海側の件ですが、メタハだけでなく、天然ガスや石油もある
ことがわかってました。つい先日、油田の開発計画も発表されましたね。
●新潟県沖に大規模油田か、来春にも試掘
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120618-00000645-yom-pol
このことは関係者はみな知ってますし、少し調べれば分かることです。
青山氏がご存じなかっただけでしょう。同じ海域でメタハイと石油のどっちを
掘るかと聞かれたら、まよわず石油でしょう。
by MANTA (2012-06-23 20:32) 

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