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なぜ科学の誤報は生まれるか?(2) [ 科学コミュニケーション]

連載「科学コミュニケーション」、科学記事の誤報の続きです。
そういえば以前、新聞のある科学記事をみて、唖然としたことを思い出しました。
探してみたところ、下記記事でした。引用します(気になったところを赤色で示します)。

4118056340_e000cc8fba_m.jpg
2009 Leonid Meteor by Navicore (protected by CC License)

恐竜絶滅の原因? いん石衝突を爆発で再現
6月にメキシコで温暖化検証

(1996.05.18 毎日新聞大阪朝刊29頁社会)
【メキシコ市17日根本太一】
 巨大いん石の地球衝突が恐竜絶滅の要因となったとする説を裏づける調査が6月中旬、メキシコ・ユカタン半島で日、米、メキシコの3国合同で世界で初めて実施される。
 地球上の全核爆弾が爆発する際の10万倍は発したとされる衝突エネルギー量を計測し、地球環境への影響を解析する。チーム座長の松井孝典東大理学部助教授(50)=惑星科学=は「人類が直面する環境問題にいかに対処するかにも密接に関連する」と話している。ユカタン半島北端に約6500万年前、いん石が衝突したらしいことは1991年、米研究班の調査で報告されている。推定直径10キロ、重量10兆トンのこの物体は、一帯の硫黄分を含んだ石灰質の地表を直径180~300キロにわたり吹き飛ばした。
 巻き上げられた硫化物は硫酸の水滴となって成層圏のちりを包み、太陽光を遮断。その後の酸性雨と、石灰層から蒸発した酸化炭素の影響による温暖化で「白亜紀」の恐竜を絶滅させ、ほ乳類の繁殖を促し、間接的に人類の誕生を招く引き金になったとされている。
 調査はこの説を実証するのが狙いで、クレーターの核とみられるユカタン州チクスルブ村を中心に半径50~150キロの直線上に計14カ所の縦穴を50メートル掘り、それぞれ400キロのダイナマイトを爆発させて地震波を測定、解析する。
 参加するのは東大、メキシコ国立自治大と米ブラウン大の3大学。約1000万円の費用はすべて日産科学振興財団など日本の民間からの募金で賄う。このいん石には「真上」「斜め」衝突の2説があり、斜めに当たった際のエネルギー発生量は真上の場合の約10倍。チームは斜め説を取っており、実証の結論は8月中に出る予定という。
 松井助教授は「直径10キロ規模のいん石が地球にぶつかる確率は3000万年に1回。調査は秒速20~30キロの速度で直撃されると地球環境がどう破壊されるか計測できる機会であり、温暖化問題の貴重なデータにもなる」と語っている。

もう20年ほど前の記事です(結構探しました)。私も当時はまだ学生でした。
「へぇー、隕石衝突を再現ねぇ、、、え、再現!?」
いま再現したら、今回は人類が滅亡しますけど!! え、ダイナマイト!?まじで?
でも、そんなんで再現できんし。小規模な再現実験やったらメキシコまでいかんでええし。

実はこれ、再現するんじゃなくて、地下に埋もれたクレータの形を地震波を使って
可視化するだけなのだ(いわゆる弾性波探査)。爆発を再現、なんてやりません。
●P波反射法地震探査(阪神コンサルタンツ)
 http://www.hanshin-consul.co.jp/gyoumu/gikai/hansha/p-hansh.htm
埋もれたクレータはこちら。これは重力探査でイメージ化したもの。弾性波探査で
より細かく見て、クレータの成因を考えようというのが実験の目的なのだ。
●発見された惨劇の爪痕--チチュルブ・クレーター
 http://homepage3.nifty.com/iromono/kougi/ningen/node76.html

記者さんは、「いん石」「衝突エネルギー」「ダイナマイト」というキーワードから、
「いん石の爆発をダイナマイトで再現するのかな?」と連想しちゃったのかも?
kyoryu.JPG
 ”ダイナマイトでは絶滅しないよー”

上記は毎日新聞大阪版。これが東京版ではこんな感じ。
----
恐竜絶滅「いん石説」実証へ爆発実験で解析
-メキシコで日米など合同調査

(1996.05.18 東京朝刊3頁3面)
【メキシコ市17日根本太一】巨大いん石の地球衝突が恐竜絶滅の要因となったとする説を裏づける調査が6月中旬、メキシコ・ユカタン半島で日、米、メキシコの3国合同で世界で初めて実施される。地球上の全核爆弾が爆発する際の10万倍は発したとされる衝突エネルギー量を計測し、地球環境への影響を解析する。チーム座長の松井孝典東大理学部助教授(50)=惑星科学=は「人類が直面する環境問題にいかに対処するかにも密接に関連する」と話している。
 ユカタン半島北端に約6500万年前、いん石が衝突したらしいことは1991年、米研究班の調査で報告されている。この物体は、一帯の硫黄分を含んだ地表を吹き飛ばした。巻き上げられた硫化物は硫酸の水滴となって成層圏のちりを包み、太陽光を遮断。その後の酸性雨と、石灰層から蒸発した二酸化炭素の影響による温暖化で「白亜紀」の恐竜を絶滅させ、ほ乳類の繁殖を促し、間接的に人類の誕生を招く引き金になったとされている。
 調査はこの説を実証するのが狙いで、クレーターの核とみられるユカタン州チクスルブ村を中心に半径50~150キロの直線上に計14カ所の縦穴を50メートル掘り、それぞれ400キロのダイナマイトを爆発させて地震波を測定、解析する。
 参加するのは東大、メキシコ国立自治大と米ブラウン大の3大学。約1000万円の費用はすべて日本の民間からの募金で賄う。結論は8月中に出るという。

大阪版・東京版とも、(第1行目を見ると)同じ記者さんによる記事です。しかし見出しが
違う。東京版では「再現」というワードは使われていません。実は新聞記事の見出しは
記者本人ではなく、編成部がつけるそうです。記者ではなく、大阪版の編集部の方に
思い込みが入ってしまったんですね。元の記者に確認すればよかったのに。

多少専門的な知見から、古い新聞記事をみてみました。上記の指摘は、間違いと
言えないくらい些細です(多くの読者は違和感を覚えなかったかもしれません)。
しかし、記事を書いている本人たちはどうだったか?想像すると、
取材した記者も、デスクも、編成部も「なんかへんだな?」と思いながら記事を
仕上げていたのではないでしょうか? お互いに少し確認したら、一番大事な
キーワード=「クレータの地下構造を探る」が抜けることはなかったでしょう。

つづきます。
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コメント 5

レイン

丹念に探されましたね。それも大阪版と東京版の見出しの違いまで。
8月に出るという結論が気になりました。
by レイン (2012-11-16 00:27) 

MANTA

>丹念に探されましたね。それも大阪版と東京版の見出しの違いまで
これもネットのおかげです。私が読んだのは大阪版でした。

あとクレータの弾性波探査(地震探査)の結果は下記にありました。
Catastrophic Events and Mass Extinctions: Impacts and Beyond, 第 356 号
http://books.google.co.jp/books?id=ZaIO8wl_OZIC&lpg=PA69&ots=lCO-WsASlQ&dq=Takafumi%20Matsui%E3%80%80seismic%20reflection%20Chicxulub%20crater&lr&hl=ja&pg=PA44#v=onepage&q=seismic&f=false
(こちらの44頁に断面図あり。ただし松井先生の結果ではない)
by MANTA (2012-11-16 08:54) 

MANTA

あと松井先生は50歳で、まだ助教授だったのね~
私もがんばろう。
by MANTA (2012-11-16 08:58) 

株の初心者

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 株の初心者 (2014-07-08 10:04) 

MANTA

株の初心者さん、コメントありがとうございます。
と言いたいところですが、リンク先は当サイトとは関係なさそうですね。
今回はコメントをそのままにしておきますが、次回以降は
当サイトと関係のあるサイトをご紹介くださいね。
by MANTA (2014-07-10 19:08) 

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