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探偵型科学とは? [ 科学コミュニケーション]

前回の記事(巨大生物に宇宙人:冒険型科学)の続きです。
冒険をして発見をする。科学でなくても、ワクワクしますね。
また冒険のためにはいろんな道具も必要です。実際、NHK特集の「ダイオウイカ」
でも、奇想天外な道具がいろいろ紹介されていました。

でも発見をしてしまいました。胸アツな興奮もおしまい。さてどうしましょう?

科学偉人伝―まんが 発明発見の科学史

科学偉人伝―まんが 発明発見の科学史

  • 作者: ムロタニ ツネ象
  • 出版社/メーカー: くもん出版
  • 発売日: 1997/03
  • メディア: 単行本


そもそも、冒険→発見の科学には限界があります。常に安全な旅ができ、
幸運に恵まれ、お宝が待っているとは限りません。闇雲に夜空に望遠鏡を向けても、
深海に潜ってみても、そう簡単には新発見とはならないのです。

そこで科学のもう一つのスタイル、「探偵型」の出番です。
こちらはまず「推理」します。例えば、前回に挙げたガリレオの場合。
望遠鏡で木星の周りを回る衛星を見つけた後に、彼は「地球も太陽の
周りを回っているのではないか?」と推理します。そう、地動説です。
彼は地動説を支持する証拠を複数探して、論文としてまとめます。

探偵型科学は、一般には「問題提起型」 あるいは「仮説検証型」と呼ばれています。
こうではないかという仮説をもって、それに合う証拠を探すのです。
あるいは次のような文脈にそった研究だと考えてもよいでしょう。

「〇〇については従来は××と考えられてきた。しかしながら、■■という問題が
 生じている。そこで問題解決のため、新たに△△について考えた。その結果…」


detective.jpg
 綿密な分析に基づいて行動するのだ。

もしも問題解決や仮説検証ができなかった時は どうするの?
本物の探偵だったら大弱りですが、科学者はちっとも慌てません。
なぜなら「仮説が間違っている」ことを「明らかにできた」からです。
これも立派な科学成果です。(※詳しくは過去の解説を参照ください
あるいは、仮説をすべては検証できなかったら?それでも、なにか一つくらいは
小さな解決・検証ができているでしょう。ならば(こっそりと、いや堂々と)
提起する「問題・仮説」の方を、解けた問題に合わせて変更してしまいます(^^)

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実際には、「冒険型」と「探偵型」の関係は密接で、複雑にからみ合っています。
発見があるからこそ、仮説が生まれ、そこからまた発見が生まれます。

発見=>仮説=>新たな発見=>新たな仮説=>(以下、無限ループ)

先のダイオウイカの場合は、「なぜ餌の少ない深海で、ダイオウイカはあれほど
すばやく動けるのか?」 「オスメスはどうやって知り合うのか?」「そもそも
何匹くらいいるのだろうか?」「くじら vs ダイオウイカ」など、疑問はつきませんし
あの映像から新たな仮説も飛び出すでしょう。またアンティキティラ島の機械も、
「誰が作ったのか?」「なぜこの技術は失われたのか?」といった疑問と仮説へ
つながっていきます。

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また時には、「探偵型」の研究の最中に、偶然(無関係の)発見をして、その結果
「冒険型」に変貌する研究もあります。あるいは一見、「冒険型」にみえても、実は
緻密な計算や推測=「探偵型」が背後にあったりします。先のダイオウイカの発見も、
それまでの数多くの調査に基づいて、およその海域と水深を絞って調査していました。
またガリレオは、望遠鏡で木星を見る前から、地動説を信じていたそうです。
●世界天文年2009:ガリレオの生涯 -動かぬ地動説の証拠
 http://www.astronomy2009.jp/ja/webproject/life-g/10.html
●1597年、ケプラーに当てた手紙
 http://law2.umkc.edu/faculty/projects/ftrials/galileo/letterkepler.html

ですので、科学の発見を、それ単体として考えるのも良いですが、
その発見は冒険型だったのか、それとも探偵型だったのか、なんてことを
考えてみると、科学ニュースをもう一歩踏み込んで楽しめるかと思います。
たとえば山中先生のiPS細胞、あの発見はどうだったんでしょうね?

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以上、いかがでしたでしょうか?科学を学んだことがある方にとっては常識ですが、
そうでない方の中には「冒険型科学こそ科学である」という方も案外多いようです。
例えば「地球温暖化」などは、探偵型科学の典型例ですが「仮説を検証する」という
プロセスが分かりにくいのか、我々の生活に密着しすぎているせいか、一般の方には
どうにも科学としての面白みにかける傾向があるようです。しかし、そんなことはない。
「探偵型」も「冒険型」も表裏一体。その2面性がオモシロイのです。

なお上記の探偵型・冒険型などは、下記の本に基づいています。
(昔に読んだので仔細が違うかもしれませんが)ご参考まで。
また以上を含み、卒業論文の書き方や研究の仕方などを、スライドに簡単に
まとめたものを理系の文章の書き方Tipsとして公開中です。

雪は天からの手紙―中谷宇吉郎エッセイ集 (岩波少年文庫)

雪は天からの手紙―中谷宇吉郎エッセイ集 (岩波少年文庫)

  • 作者: 中谷 宇吉郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/06/18
  • メディア: 単行本


…他方、最近は、多くの(若手の)研究者は未知の領域を冒険することを嫌って、
探偵型に力を入れすぎかもしれません。仮説にこだわるばかりで、
あたらしいアイデアや道具を作ることが疎かになってませんか?
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みきぱぱ

探偵型というとアインシュタインの相対性理論がそうなんですかね?
相対性理論の発見は人類史上最大の発見ではないかと思っています。
by みきぱぱ (2013-01-21 19:03) 

MANTA

みきぱぱさん、確かにアインシュタインは、一本気に方程式を解くのではなく、
「きっとこうなるのではないか?」と思って解いていたそうですね。
例: http://homepage2.nifty.com/eman/relativity/einsolution.html
ここまで来ると「探偵の推理」というより、「神の啓示」ですな。

…いや、これは脳内に埋もれていた何かを発掘するのに近いかも。
そう思うと「冒険型」科学なのか?
by MANTA (2013-01-21 22:28) 

アヨアン・イゴカー

>「神の啓示」
結局は、科学も芸術も同じところに帰着するような気がします。
by アヨアン・イゴカー (2013-01-22 00:49) 

MANTA

アヨアン・イゴカーさん、レオナルド・ダビンチを例に取るまでもなく、科学と芸術
は自然や人の真理を探求する点で目的は同じです。
ただ、高度に分業化された現代では、それを忘れがちでもありますね。
by MANTA (2013-01-22 08:39) 

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