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アトランティス大陸は現実?幻?(2) [ 科学コミュニケーション]

前回の記事の続きです。めずらしく連続投稿です(^^)
ブログ読者の方から、Google Mapに人工的な地形が見られるのですが?という
ご質問を頂きました。質問その1=2009年に話題になった人工的な地形は、今回
の検討の結果、やはり船の航跡である可能性が高いと結論づけました。

では質問その2=大西洋の別の場所に見られる「線状や升目状に奇妙に整った海底地形」
は自然地形か、人工的なナニかか?(うつぎれいさん、ご質問、ありがとうございます。)


 これですね。

まず、真ん中上部~左端への長ーい線状の地形は、おそらくは船の航跡が残っている
のだと思われます。問題は図中央付近の「升目状地形(あるいはベルギーワッフル状地形)」
です。升目の幅は10-15kmと巨大です。これも航跡かもしれませんが(おそらくGEBCOの
元データまで戻ればわかる)、ここは一つ、本物の地形と考えてみましょう。
じゃあ、これは人工的な地形なのでしょうか? いや、私は「自然の地形」だと考えています。
実はこの場所は普通の海底ではありません。海底がいま生まれつつある「海嶺」という
場所です。しかも海嶺が3つに分岐している「三重会合点(Triple Junction)」です。
※三重会合点で検索すると、いろいろな解説を見ることができます。
※あるいは下図。RRR Triple Junction。
 s279_1_021i.jpg
 Triple junctions(OpenLearn - Plate Tectonics, AContent)より
 https://acontent.atutorspaces.com/home/course/content.php?_cid=639

ご指摘の地域は「Azores Triple Junction」として知られており、英語版Wikipediaでも
紹介されています(下図はWikipediaより
800px-Azorestriple3d.jpg

一口に海嶺といっても種類があり、プレートの移動速度などによって海底面に
できる地形は異なります。大西洋中央海嶺は「低速拡大軸」として知られていて
南北に延びた山や谷が規則的に繰り返される地形が観察されています(下図)。
 cfd-1014_midocean.jpg
 Mid-Ocean Ridge (Pearson Education, Inc.)より
 http://www.phschool.com/atschool/phsciexp/internet_activity/cfd-1014_midocean.html
三重会合点では、これに別方向(東西)に伸びる山・谷が加わります。
このような山谷の交差が、ワッフル状の地形を作ったのではないでしょうか?
ですので、ご質問その2=規則的な升目状地形は自然にできたものと思います。

----
さてここで、ご質問者のうつぎれいさんからのこんなコメントをご紹介しましょう。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2009-02-25#comments
「私にはこのような問題に対しての専門家方々のコメントの多くが、そのようなものの存在
 を素直に積極的に肯定するのではなく、むしろ何か無理矢理にでも否定的な可能性を
 必死に探って、それを大したモノではなく、全く注目になど値しないモノであるかのように
 コメントしようとしている、或いはそのようにコメントしなければならない・・・という強い傾向
 を感じてしまうのです( ちょうどUFOや超常現象についてコメントする時の多くの大学
 の物理学教授のようにです)。」

ご指摘の通り! 科学者はいままでの科学の上に、あらたな科学を積もうとします。
ですので「謎の海底遺跡などと言われても困るよ~」というのがホンネ。
しかし、それはよく「落とした鍵を探す話」として揶揄されています。
※皆さんご存じですか? 「街灯の下で鍵を探す」あるいは「暗闇で鍵を探す」で
 検索すると見つかりますよ。
なんかそれだと科学ってつまんないのですが、科学分野の細分化が進む昨今、
常識に背くことを研究してる暇はないか。うん、仕方ない、仕方ない…

でも考えてみたら、今から数百年前の科学の世界でも同じことが言われてたかもね。
「最近の若いもんは広い目線を持ってない!狭いことばかり調べおる!!」なんてね。
では長い年月の間、なぜ科学は滅びなかったか?科学は時として常識を自ら壊してきた
からです。だって上で紹介した「海嶺」はプレートテクトニクスの産物ですが、わずか
50年前はほとんどの科学者がより古い理論(地向斜造山論等)を信じていたのです。

なにがキッカケで、古い常識は新しい常識に取って代わられるのでしょう?
本記事で紹介したワッフル状の地形を例に考えてみましょう。海底地形の規則正しさだけ
では、自然地形か人工地形かは決められません。直接的な証拠にも乏しい。こんなとき
科学者は間接的な証拠を探してきて、どちらの説がもっともらしいかを考えます。
(間接的証拠の積み重ねが、より直接的な証拠へと昇華し、新しい常識を生みだす)
本件については前述のとおり、大西洋の海嶺の多くで規則的な山谷が見られることを
間接的な証拠として、これが組み合わさるとワッフル状地形を作れるというアイデアを
私は提案しました。もしも「ワッフル状地形は人工的なものだ!」と言おうとするならば、
同じようにその理由や観測結果を(間接的でも良いので)探してこないといけないのです。
さしあたって、これを人工物とする証拠を私は思いつきません。
一方でアトランティスやムー大陸は存在しない証拠は他にもいくつかあります。
詳細は下記を御覧ください(宣伝!!)

海の授業

海の授業

  • 作者: 後藤 忠徳
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2013/07/12
  • メディア: 単行本


誤解されませんように。古代の海底都市へのロマンは打ち砕かれてはいません。
「奇妙な人工的地形」が仮説ならば、サポートする証拠を探してくる。それが科学的な
道のりとお考え下さい。ご質問者のうつぎれいさんは、調査船で地形を詳しく調べてほしい!
と国の研究機関などに連絡をされているそうですね。すごいパワー!!
ぜひそのパワーを科学的な見方へお使い下さい!!

最近は市民による科学を「Civil Science」と呼ぶようです。地球惑星科学の
世界では(天文や化石を除くと)、Civil Scienceは全く根付いていません。
ですが、例えば「不思議な海底地形を探そう」ワークショップなどが開催されると
面白そうですね。プロの指導のもと、一般の方々が海底地形の見方を教わるのです。
多くの方々が、ご自身で仮説を立てていろいろ考えられた結果、「○○の証拠を探したい
ので、××のデータを見たいのだけれども」というような具体的なリクエストを研究機関等に
できるようになれば、地球惑星科学はもっと楽しくなるでしょう。
あ、そのワークショップって、私が企画せなあかんのか!? (^^;)

…ということで回答になっておりますでしょうか?
ちなみに後半の部分は(頂いたご質問とは独立に)、一度ブログ書きたいと
思っていたので、この記事のカテゴリーを「科学コミュニケーション」にしました。
鋭いご質問でした。ぜひ今後も、いろいろご意見頂けますと幸いです。
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