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第2のSTAP事件を防げるか? [ 科学コミュニケーション]

小保方氏の問題は概ね片がついた。あとは理研退職後の彼女に
どんな沙汰が下るか、そして同様の事件を今後どうやって防止するか
である。関連する科学者はやっと本来の研究活動に戻れるだろう。

しかしちまたでは相変わらずこうである。
●今は存在せずともSTAP細胞は死なず、でいいのではないか
 http://plaza.rakuten.co.jp/odata325juk/diary/201412190000/
(以下引用)”ただこれでSTAP細胞は存在しない、と結論は出せないだろう(中略)
 今は存在せずとも、STAP細胞は、貴方たちに広く門戸を開いて待っている”(※注)
●小保方氏が「魂の限界まで取り組んだ」ことへの評価について
 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141220-00000018-pseven-soci
(以下引用)”「ケシカラン!」「とんだ食わせ者だ」と尻馬に乗って非難するのは、
 もっとも恥ずかしい行為。(中略)叩きやすい相手を無邪気に叩いてしまうみっともなさ
 を他山の石にさせてもらいましょう。”

小保方氏が男性だったらどうだろうか? このような擁護論はでるだろうか?
何度でも言うが、彼女達が主張していたSTAP細胞には、なんの根拠もなかった。
仮に今後、誰かがSTAP細胞を作ることができたとしても、彼女達は今回、科学的には
間違ったことを言い、周囲を翻弄した。故意であろうとなかろうと、科学者としては失格だ。

 10953083134_09500df8f1_z.jpg
 疑惑の霧はまだ晴れてはいない。
 (Golden Gate Bridge by Takashi Hososhima)
 (http://www.flickr.com/photos/46151146@N04/10953083134/

その一方で、次のようなコメントを当ブログに頂いた。
(前記事を参照。”り”さん、さんきゅーです)
>第二のstapを起こさない対策はどうなるのか。
>何らかのシステムを変えないといけないが、
>こういう事にお上が口を出すといままで30分で済んでいた仕事が
>あの書類の提出してチェックをうけてだれかれの承認を受けて
>みたいな半日かかるようになったりすることもある。
>そういうバランスが崩れたりしないのか。
>ips研究の足を引っ張ることにならないか。
>しかし、だからと言ってソシテムが変わらないのも困る。
>最低でも諸外国レベルのチェックはして欲しい。

頂いたコメントのとおりである。小保方氏の思い違い(もっとハッキリ言えば捏造)はナゼ
起きて、関係者はどうして誰も気づかなかったか、このような事件はどうすれば防げるか
に焦点はようやく移った。あまりにも遅すぎる原因究明・対策検討である。

では今後を占うために、”り”さんが指摘されている「諸外国」の学術論文のチェック体制
をみてみたい。下記によくまとまっていたので紹介しよう。
●科学における不正行為とその防止について
 http://www.amy.hi-ho.ne.jp/mizuy/zenki/fuseibosi.htm
 ※原資料は日本学術会議第18期資料「科学における不正行為とその防止について」
・米国では、生命科学分野について研究公正局(ORI)を設置。
・デンマークでは、医学研究評議会の主導で研究不正委員会を設立。
いずれも生命科学系である点が興味深い。他にノルウェー・スウェーデン・フィンランド・
ドイツ・英国・中国などの例も紹介されている。ただし米国やデンマークなどの機関は
不正の予防と告発事例の調査を行なっているが、自国から提出される論文を1つ1つ
チェックしているわけではない。


 なにせ膨大な量ですからねぇ。。。

そもそも第三者が個々の論文をチェックできるはずがない。STAP細胞論文の実験手順を
チェックするだけで半年以上の期間と、1500万円の費用と、多くの(おそらくは若い)研究者
の貴重な実験時間が投じられたのだ。
●「これ以上の実験、意義ない」理研会見一問一答
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141219-00050076-yom-sci
本来は論文の不正など起こるはずがないと思われてきた。論文は衆人の目にさらされる
のだ(研究費の不正使用とは異なる)。通常はこれで自浄作用が十分働くはずなのだが
高度に複雑化した最新科学では、その実験に携わった人間にしか分からない様々な要素
が存在する。もしその高度さを悪用されたら? 一流の嘘を第三者が見破れるのか?

では論文を掲載する学術誌の側の不正チェック体制はどうか? こんなニュースがあった。
●Nature誌、生命科学論文の掲載審査を強化する方針
 http://science.slashdot.jp/story/13/05/01/097239/
(以下、引用)”生命科学関連論文2047件を調べたところ、約4割に不正行為かその疑いが
あったそうだ。こうした信頼性に疑問がある論文が世界的に増えているため、対策が必要と
判断したという”
なるほど、これで安心だ、、、と思いきや、上記のニュースは2013年5月のもの。
その後、STAP論文がNature誌に載ったことが今回のSTAP事件の発端だ。
つまり雑誌社は口では色々言っているが、なにもできていない。

一体どうすればよいか? 国内だけでなく、諸外国も頭を悩ませているが、
結局は研究不正における予防の努力と罰則の強化しかなさそうだ。
・各研究機関では「不正ガイドライン策定」「コンプライアンス教育」などが行われては
 いるが、まだ不十分だろう。特に調査委員会の招集方法や罰則について、機関内の
 研究者などにもっと浸透させるべきだ。
 (京都大学は公開しているが、何人の研究者が知っているだろうか? →こちら
・各研究機関の調査委員会のメンバーには、学外の識者を入れるべきだ。
 これは多くの機関で行われていないが、学内の識者=捏造などの問題を起こした
 研究者の「身内」になるので、「仲の良し悪し」で裁定が決まる可能性がある。
 (これは本ブログでも過去に取り上げた → 連載「査読とは(8)」を参照
・各研究機関に任せるだけではいけない。研究機関自身が「自分の組織を守ろう」と
 するからである。国や学会などにも、不正通報の窓口を設ける必要がある。
 (国の窓口はあるが、その後は各研究機関へお任せの様子。匿名告発は不受理か?)
 例:JSTの事業に係る研究開発活動の不正行為(研究成果の捏造、改ざん、盗用)の告発受付窓口
罰則についても、国が厳しく定める必要がある。例えば研究費の不正使用については
 国が記録していて、ブラックリスに登録されると種々の研究助成金を一定期間受けられ
 なくなる。論文捏造などの不正についても同様のシステムがあってよい。

こんな普通のアイデアしか、私は持ち合わせていない。これで防止できるのか?
しかし(ある意味、今回の事件の背景もといえる)日本の生命科学系の学会等からは
「国は不正防止のための機関設立を!」という積極的な意見は聞こえてこない。
普通のアイデアすら困難であれば、第2、第3のSTAP事件は起きるだろう。

・・・だから「自分がSTAP細胞を作ってやる、というチャレンジ精神を燃やそう」だとか、
「小保方氏が”魂の限界まで取り組んだ”ことは高く評価できる」などと言っている場合では
ないのだ。事態は相当切迫しているとみてよい、と私は思う。

-------
※注:こちらは志茂田景樹氏のブログのようだ。同氏はTwitterで次のように補足している。
”文中では生物学の常識を覆す新発見の代名詞としてSTAP細胞の名称を使用しました。
生物学を目指す人達へのエールです。”
「STAP細胞」は(少なくとも現時点では)、「捏造科学」の代名詞となっている。志茂田氏は
作曲家を目指す若者に「第二の佐村河内氏を目指せ」と言っているようなものだ。

※ちなみに「小保方氏が捏造をやっていたとしたら、彼女はなぜ”STAP細胞はあります”
だとか、”魂の限界まで”追試実験に取り組んだのですか?」と聞かれることがあります。
本当のことは私には分かりませんが、今回の事件は「シェーン事件」にそっくりでした。
私は彼女とシェーンは同じだと思っています。興味のお有りの方はこちらをご覧ください。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2014-03-14
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MANTA

おまけ:こんなのもあった。同じく「日本学術会議第18期資料」の読解。
(化学と工業, 第57巻, 第2号, 2004)
 http://www.chemistry.or.jp/rinri/fusei-boshi.pdf
by MANTA (2014-12-21 16:29) 

mushi

こんな擁護論まで。
http://www.47news.jp/47topics/e/260651.php
まああきれるしかない記事ですが、一番の突っ込みどころは、「後半、作家だの怪しげな文芸評論家だのにコメントを求めに行くのは何でだ」でしょうかね。

by mushi (2014-12-30 09:31) 

MANTA

mushiさん、ご紹介ありがとうございます。
記事の最後に次のような一文がありますね。

「正解しか許されない場所から、果たして世紀の大発見が生まれるだろうか」

不正確な(嘘の)報道を行ない、その結果外交問題に発展していても
「どーもスイヤセンデシタ」ですむマスコミの人達にとっては、科学の真髄など
どうでもいいことなのかもしれませんね。
マスコミだけではありません。科学を理解しても仕方ない(理解できない?
したくない?)という日本の国民性がいろいろな甘さを許すのでしょう。
どうすればよいだろうか?
by MANTA (2014-12-30 11:19) 

MANTA

ほら、こんなことも明らかに。
●小保方さん“退場”も…論文コピペ疑惑が「大物」にも飛び火
 http://nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/156273
(以下引用)
”80を超える大量の医学論文の画像酷似が指摘された”
”有名大の元医学部長や現病院長などの超大物もいる”
早く手を打つべき。あるいは、偉い先生方も「やっている」ということは、
もやは打つべき手はなし? 
(こんなことを私のような門外漢に書かれている時点でダメだね)
by MANTA (2015-01-17 13:39) 

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