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シミュレーション結果を検証・改善する知恵 [▼科学ニュース New!]

現在の科学研究をコンピュータが支えている事実は否定しようがない。
文書を書くのも、グラフを書くのも、パソコンの画面の前で行っている。
(このブログだって、コンピュータがなければ実施不可能だ)
特に、数値シミュレーションの進歩には眼を見張るものがある。

COP21、合意文書草案まとまる 先進国と途上国の隔たり残る

例えばいま、フランスで地球温暖化対策に関する国連の会議「COP21」が開催されて
いるが、数値シミュレーションに基づく温暖化の将来予測が議論の基礎となっている。
(例えば下記のような、気温変化の将来予想:JAMSTECなどによる)


ただし、この計算結果は本当にあっているのだろうか?
数値シミュレーションは本当になんでもできる。1万年前の過去だって、
1万年後の未来だって一応再現できるし、海だろうが山だろうが、世界の
どの地域の出来事だってシミュレーションできちゃう。ただ計算結果を
検証するには、同じだけたくさんのデータを集めないといけない。

手立ての一つは国際的なビッグプロジェクトの立ち上げであるが、これには相当の
お金と人手がかかる。例えば世界の海洋の水温分布は約4000台の漂流ブイ
(アルゴフロート)により観測が行われている。
●日本のアルゴフロートサイト(JAMSTEC)
 http://www.jamstec.go.jp/ARGO/argo_web/argo/
 argo.JPG
 (図も上記のJAMSTECサイトより)
日本はこのうち160台ほどの管理をしている(図中の赤色)。また、この観測を
維持するため、日本はこれまでに約1300台のアルゴフロートを西太平洋に投入した。
同サイトの「統計情報」に基づけば、投入すぐに不具合を起こすアルゴフロートを
除けば、1台あたりやく3年(以上)は稼働しているようだが、その後は電池切れ等
のため、1100台以上が通信途絶となっている。つまりは壮大な使い捨てである。
また、ここまでやっても「三陸沖の細かな海流の情報をみたい」というニーズには
応えられない。もっとお金をかけるか、あるいは知恵を絞るか?

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海の上のデータを増やすにはどうすればよいか?
知恵を絞る人達はたくさんいる。下記は一例。
●オオミズナギドリと内航貨物船がとらえた津軽暖流の渦
 ~新たな観測手法がひらく海流予測の新展開~
 http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20151203/
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20151203/

かいつまんで話せば、「鳥」と「船」に海流観測をしてもらい、そのデータを
数値シミュレーションに加えれば、従来よりも精度よく(細かく)、沖合の潮の
流れの様子がわかる!らしいのだ。 潮の流れは、漁業に役立つ情報であり
(=魚はどこにいるか?)、また船の運航にもかかせない(=潮の流れをうまく
利用すれば燃費を抑えられる)。

「船」が測っている海象データを、数値シミュレーションに役立てるのはなんとなく
分かる。ではどうやって「鳥」で海流データを得ているのか? 仕組みは案外簡単だ。
まず海鳥(オオミズナギドリ)にGPS受信機を取り付ける。オオミズナギドリは
時に1000kmも沖合まで飛んで行くことがあるが、海の上で浮かびながら休む時
もある。休んでいる海鳥は海流と共にゆっくり移動する。この時、GPS受信機が
海鳥の位置を刻々と記録しているので、海流の様子がわかるというわけだ。

ちなみにGPS受信機は、そもそもは(海流ではなく)海鳥の生態を調べるために
取り付けられていた。小型の記録計を動物の体に取り付けて、その行動を計測する
調査手法は「バイオロギング」と呼ばれており、今回は東京大学の佐藤先生による
「バイオロギングの応用術」が新たな成果を生んだ形だ。
http://www.fishecol.aori.u-tokyo.ac.jp/sato/2010/01/15/119/
なおこちらの佐藤先生とは、とあるシンポジウムでご一緒させて頂いた。
お話がとても面白く、印象に残っている(一方、私はといえば。。。)

数値シミュレーションに、船舶の運航データに、海鳥の生態データ。
これらが一同に介することは稀だ。学問分野が異なる上に、船舶データは学術用
というよりも、船舶の安全運行のためのものである。ただしこれらをうまくMIX
することで、多大にお金をかけることなく、数値シミュレーションの結果の検証
ができ、改善もできるとはすばらしい。ビッグプロジェクトではなく、
いわゆる「ビッグデータ」が産んだ成果ともいえるし、
学問領域や産学の壁を越えた異分野コミュニケーションの好例だ。
私も学ばねば。

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なお、地球温暖化の数値シミュレーションに対する「自信」については
以下が参考となる。温暖化予測が間違っている可能性について触れられている。
●いまさら温暖化論争? 温暖化はウソだと思っている方へ
 http://bylines.news.yahoo.co.jp/emoriseita/20151202-00051987/

また下記では数値シミュレーションが何に立脚しているかを簡単に説明している。
●第12回 世界はこれからどうなるだろう
 (Webナショジオ:伊勢武史「森で想う環境のこと・人のこと」 )
 http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/427954/110500008/
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