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池上彰の発明(2) [ 科学コミュニケーション]

昨日は池上彰さんの新聞整理術の話をしましたが、その続き。
私は、池上さんは偉大な発明者だと思っています。

これの発明者です。
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池上さんの名台詞です。新語・流行語大賞トップテンにも選ばれたようですね。
●【2010流行語トップテン】「いい質問ですねぇ」池上彰 喜びのコメント
 http://www.oricon.co.jp/news/82608/full/
すなわち、こんな使い方です。
・池上さんのニュース解説などを聞いた人が質問をする。
 例:ひな壇のタレントが「え?どうして△△なんですか?」
   あるいは「ということは○○は××なんでしょうか?」
・質問へ答える前に、池上さんいわく「いい質問ですね~」
 そして質問に答えつつ、より詳しい解説へ。


この「いい質問ですね~」、実は難しいセリフだってこと、ご存知でしたでしょうか?
私は講義や講演などで、年間50~100回、壇上から話をさせて頂いています。
壇上での講演に対して、聴衆から質問が来る場合、、、
・的を射た質問なら、「そうです、こちらのスライドを御覧ください…」とすぐに答えちゃう。
・的外れな質問とか、答えにくい質問なら、
 「うーん、そうですねぇ、、、それはちょっと話が外れますが、、、」などと答えちゃう。

どの場合も、質問者を「褒める」というプロセスが飛びがちです。褒めたくないわけでは
ないのです。質問をうける講演者は、早く、かつ的確に質問に答えねばと、
思考が先に先に行っているので、質問者を褒める時間的・精神的余裕が少ないのです。
(個人の感想ですが、多くの講演者もたぶんそう)

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そこで、池上さん発明の「いい質問ですね~」ですよ。
講演がより深まり、講演者も波に乗れるような良い質問なら、やっぱり褒めないとね。
またそうでない(本筋から離れた)質問であっても、聴衆はいろいろな話を聞きたいもんです。
ところが講演者が答えに詰まったりすると「あれ?聞いちゃいけないこと聞いたかな?」
「空気、読まなかったかなぁ?」などと、質問者の方も不安になったりします。まして、
「それは本筋と違いますので、あとで」などと講演者が答えちゃうと、場が冷えます(※)。
的外れでも質問をするという好奇心は褒めるべきです。
通常、講義や講演では、質問がでないことも多いですが、その主要因は日本人の臆病さや
「バカな質問してしまったらどうしよう?」という恥の気持ちから来ているようです。
そこで「いい質問ですね~ ちょっと本筋からは外れますが、実は、、、」などと始めれば
講演者も質問者もハッピーです。

私も講義や講演では、質問者を褒めるよう、心がけるようになりました。
講演者と聴衆は、上下ではなくて並列な関係であるほうが、講演会は盛り上がります。
池上さん、ありがとう。助かってます。

 ※科学バーでも「いい質問ですね~」を使わせていただいてます。
  http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2013-02-11-1

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そのほかにも講義や講演で使える話術は多々あります。例えば、
「わからないときはわからないと言って良いんだよ」
これはこうやって使います。
1) 私は講義などでよく、マイクをもって壇上から客席へ降りていきます。
2) そして「じゃあ、××はなぜ■■なんだと思いますか?」とか
 「○○ってなんやっけ?高校の時に習ったよね?」という質問を聴衆に投げかけます。
3) いきなりマイクを向けられた聴衆(の一人)は、まあ多くの場合は答えに困って、
 黙ってしまいます。これではマイクを向けたこちらも困ってしまう。
 (だから、多くの先生はマイクをもって質問に回ったりしない。答えてくれないと
  困るのは先生の側なのである。壇上のほうが安心なのだ)
4) そこで「わからないときはわからないと言って良いんだよ」と私が言うと…
  困った学生はほっとした表情で「わかりません」と答えます。
5) 「じゃあ、他の人にも聞いてみよう、、、君はどう?」というように、私は次の
 アクションに移れます。
6) その間、聴衆は考えます。(え、あれって、あれだっけ?)
 あるいはホッとします。(あ、みんな分からないんだ、よかった、これから勉強しよう)

こんな些細なセリフですが、おかげで「聴衆をいじめる講演者」にならずにすみます(笑)
一方、いまいち盛り上がらないのは、講演の途中でのクイズ。
講演者 「正解は、次のうちどれでしょう? Aだと思う人は手を上げて下さい!」
こういうクイズ形式は小学生向け講演会ではウケますが、高校生以上だとシラケます。
ときには聴衆のほぼ全員が答えてくれないなんて目にもあいます。(^^;)

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あるいは次のセリフも役立ちます。
「じゃあ私から質問するね」
1) 講義や講演会の終盤では多くの場合、、講演者(私)あるいは司会者から
 「それでは会場から質問を受け付けたいと思います、質問はありませんか?」という
 アナウンスがあって、質問タイムに入ります。
2) ところが質問がこない。大勢の中で質問するというのは知恵と勇気のいる行動です。
 講演者や司会は立ち尽くしていて、手持ち無沙汰。
 「それでは質問がありませんので、終わります」となる。盛り上がりのない終幕。
3) そこでこのセリフ。「じゃあ私から質問しますね」といって、(またも)マイクとともに
 壇上をおりて聴衆の一人に向かって、「今日のお話で一番印象的だったのは?」とか
 「○○が××ってご存知でしたか?」とか聞いちゃう。
4) 私自身、講演の感想を聞いてみたいって気持ちはありますが、
 聴衆も実は、他の聴衆がどんな感想を持ったかが気になっていることが多い。
 (私、話の一部が難しくてついていけなかったんだけど、他の人はどうだろう?)とか、
 (○○が××って初めて聞いたけど、それって私だけ?)とか、ね。
 そのあたりの満足感をUpする工夫でもあります。
以上は私自身の発案ですが、多くの講演者もそれぞれ工夫されていると思います。

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ただ、まだまだ工夫が足りないと、先日の番組「あさイチ」での池上さんのお話を聞いて
感じました。池上さんいわく、「人が聞きたいと思う話をする」だそうです。
ムムム、そうですねぇ。
私自身、いろんな話題で講演しますが、自分が一生懸命やってるメインの研究内容の
話が一番ウケない(オイ!) なぜか? 熱意がこもりすぎて、聴衆よりも我が思いを
優先して話をしてしまうのでしょう。いやはや反省。
上記の当方の「発明」にしても、聴衆を無理やりステージに引き込んで(私が壇上を降りる
ことで、会場を無理やりステージ化して)、会場との一体感を出そうとしているフシがあります。
科学の話題の場合、「相手の知りたい事を話す」ためには、相手にも基礎的な科学素養を
持っておいてもらわないといけないという考えもありますから、多少の無理矢理は仕方ない?
いや、それはニュースの解説でも同じ問題か? まだまだ修行の日々でござる。

(※)先の池上さんの「いい質問ですね」ですが、先の記事によれば、、、
http://www.oricon.co.jp/news/82608/full/ 
1) 話の流れを元に戻してくれるような質問や、2) はっとさせられるような質問の時に、池上さんご自身は「いい質問ですね」と言われるそうです。そうなのか、話がズレたときには「いい質問ですね」とはおっしゃらないのですね。でも、私はズレた質問でも使ってます。質問は宝ですもん。



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MANTA

追伸:そんな池上さんがベタボメするタレントはV6の井ノ原快彦さんと
TOKIOの国分太一さんだそうです(著書『伝える力』に書かれているらしい)。

池上さんいわく、"へぇー"、"それおもしろいですね"、"スゴイですね、それは"
"それは知らなかった"、"それで、どうなったんですか?"
"ぼくにも教えてくださいよ"
など、彼らのポンポンと響く反応が素晴らしいとのことです。

「それは知らなかった」「それでどうなった(どうなる)んですか?」などは
科学の世界でも使えますね。
by MANTA (2017-01-08 12:28) 

MANTA

Facebook経由で、海外で勤務する知人らコメントをいただきました!
(下記、一部改変)
------
海外ではGood question って、英語の質疑応答とかで普通に使うけど。
「困った質問にはGood question!と取り敢えず答えて、その間に回答を考える」と教わったよ。
日本語でも使っている人、結構多いよ。
------

コメントありがとうございます。 > Kさん
たしかに海外では使ってますね。でも「Good question!」というのは、日本の教育・研究の現場(学会、講義、講演会)ではまず見ない(池上さんが流行らした今現在も)。Discussionの文化が海外に比べて希薄だからだと思ってましたが、日本でもビジネスの世界では一般的に使うのかな?だとしたら、学校の先生や研究者だけが偉そうな演者として壇上でふんぞり返ってるってわけか。うーむ。
by MANTA (2017-01-09 08:22) 

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