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査読とは(4) ~査読者の心得その1~ [ 連載 Old..]

さて今日は査読の話の続きです。
(パート1~3はこちら→http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2005-10-05-1
投稿された論文について査読者が決まると、査読者には早速原稿が送付されてくる。査読者は原稿を読み、一定期間(たとえば1ヶ月)以内に論文の掲載の可否を客観的に判定する。査読者の判定結果は学会により若干異なるが、だいたい以下のようだ。
1)そのままで学会誌に掲載(英語ではaccept)
2)字句修正などの軽微な修正後、再査読なしで掲載(accept with minor revision)
3)修正後、再査読(accept after substantial revision)
4)掲載不可(reject)
そしてもうひとつ、「専門分野が違う」として査読を断ること場合もある。査読者は判定結果とともに、判定結果の主な理由を明らかにする。また詳細なコメントや要修正箇所も示す。

査読者は論文を読んで好きなように感想を書けばよいというわけではない。査読者はいくつか心がけるべき点がある。

まず新規性だ。論文の内容は(基本的には)過去にない新しいものでないといけない。私個人、査読者として、新規性で悩む場合はしばしばだ。著者は論文を書くときに過去の研究を調べるものなので、たいていは「この論文のここは新しい」という主張を論文に盛り込んでいるものだ。しかしまれにそういう主張が少なく、査読者から見ても過去の研究との内容差が小さい場合がある(例1:手法をちょっと改良したのみで結果は同じ、例2:観測地域と結果はちょっと違うが手法も議論も同じ)。ちょっとの違いでも、過去の研究にはない新しいなにかをもたらしているはずである。査読者としては(基本的には論文として掲載したいので)、著者に過去の研究との違いの明確化を即したり、結果に対する解釈を十分に行ってほしい旨を伝える。具体的修正箇所も共に示す。査読者は自身の専門分野の研究例を調査(レビューという、英語ではReview)しているものだが、著者に修正を納得してもらうには過去の研究例を詳細に挙げる必要があるので、レビューをやり直すことも度々である。インターネットの発達した近年では楽になったとはいえ、レビューには時間がかかる。査読者が査読を断るとき、「専門分野が違うので(←ということにして?)レビューできない」ということが多いのではないだろうか?

次に信頼性だ。著者は投稿論文中で、実施した実験・観測の過程や使用した理論の組み合わせを、読者が再現できるように説明しないといけない。また得られた結果も明確に示さないといけない。実際の作業や結果のすべてを限られたページ数で書き記せないときは、著者はそれらの詳細をある程度は簡略化する必要がある。査読者は、実験・観測・理論の説明が簡略化されすぎていないか、また結果が適正に示されているかをチェックするのである。査読者だからといっても、著者とまったく同じ実験等を自前で再現できるわけではない(中にはその日、その場所でしか得られない観測データもあるのだ)。あくまで過去の様々な研究例と照らし合わせつつ判断するしかない。このあたりは「性善説」に基づいているので、たまに悪意に満ちた(取り憑かれた)研究者が、巧みな文章で査読をすり抜ける場合もある。対策としては、読者からの批判論文を受け付けて、誌面上で掲載論文の真偽を議論してもらうシステムを設けている(後述)。「論文」とは(完全とはいえないが)良くできたシステムであるのだ。

つづく
注:対象とする領域(地域)と得られた結果はちょっと違うが、手法も議論も過去の論文に準ずるものを、俗に「ケーススタディー」という。一見価値が低いように思えるがそうではない。室内実験・数値計算・野外調査、どの分野でも扱うべき課題は無数にある。従って、既存の技術や議論がこの広大な未知領域のどの範囲まで適用可能かを知る事は大切である。もし適用できない領域があったとしたら?それこそが新たな科学や技術の地平といえる。

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