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卒論でのゼッタイNGワード [ 科学コミュニケーション]

大学の先生になって、はや幾年。
毎年おもうのだが、卒業論文とか修士論文とかには、
「使ってはいけないNGワード」がある。以下は私が思う、2大NGワードだ。

"~についてはまだ良くわかっていない。なので本研究を進めた"
"~を理解するのは重要である。なので本研究を進めた"

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Warning: Hey SF...incoming by bark (protected by CC License)
https://www.flickr.com/photos/barkbud/4327199348/

研究というのは、ただ漠然と行っていてはダメである。
高校までの「勉強(学習)」と、大学からの「研究」の最大の違いは何か?
答えがあって用意されているか、答えがないので自分で探さないといけないか
である。だからといって、闇雲に答えを探すことは研究とは言い難い。
「良く分かっていないこと」「重要なこと」に向けて答えを探すのが研究だ。

なので、「良く分かっていない」だとか「重要だ」とか、
こんな当たり前なワードを、研究の主なモチベーションにしてはならない。
学生たちよ、なのに君は、なぜ当たり前のことを論文に書いてしまったのか?
簡単だ。研究に対するモチベーションが低いからだ。
「良く分かっていない」ということは、一部は分かっているということだ。
何が分かっているのか、何が全く未解明なのか、それはなぜ未解明なのか、
どうすれば解明できるのか、それは君の研究手法で解明可能なのか?
など掘り下げて行けば、「良く分かっていない」から研究するなどという
漠然とした表現など、使う必要はない。

「重要だ」という表現も同じだ。なぜ、どこで、どのように重要なのか、
それを表現せず「重要だ」で済まそうとしても、君が問題の本質を理解しては
いないことを、プロの研究者はお見通しなのである。

paper2.JPG
Dogged by JD Hancock (protected by CC License)
https://www.flickr.com/photos/jdhancock/3961002721/

…とはいえ、卒業論文の冒頭には次のような文章を見かけることが多々ある。
以下は、ある一流大学の卒業研究概要集からの抜粋である。
()内が私のコメントだ(自戒の念も込め)。

「~には未解明な点が多い。そこで本研究では…」
「~は十分に解明されていない。そこで…」
  (未解明だから研究するのは当たり前)

「~の適用が試みられている。そこで本研究では…」
  (あ、そう、じゃあもう適用例あるよね)
「~の研究は不足している。そこで…」
「~の詳細はよくわかっていない。そこで…」
「~の研究は少なく、その知見は不十分である。そこで…」
「~の事例はほとんどない。そこで…」
  (研究の"不足"も"ほとんどない"も、言い換えれば既往研究はあるってこと)
  (じゃあ、既往研究の問題点とか解決方策を述べないのはなぜ?)

「~の影響を受けることが考えられる。そこで…」
  (そりゃなんらかは受けるだろう。で?)
「~といった性質が表れる可能性がある。そこで…」
「~の活用が試みられている。そこで…」
  (なぜ可能性があると言えるのか? 活用を試みた結果はどうなのか?
   既往研究をもっと大事にして、そして自身の研究に活用すべき)

「~を行う上で重要である。そこで…」
「~にとって大変意義深い。そこで…」
「~は十分に検討する必要がある。そこで…」
  (何かを科学的に言ってるように見せかけてるだけで、
   実はなにも言ってない、ということに気づいてる?)
  (なぜ重要で、なぜ意義深く、なぜ検討の必要があるのか、
   具体性が乏しければ、お題目を唱えているに過ぎない)

30名程度の卒論生のうち3分の1強の学生が、この体たらくである。
しかも一部の研究室に、このような学生が多々見られる。
笑い事ではない。研究指導の結果が、文章となり現れている。

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「良く分かっていない」だとか「重要だ」とか、そんなワードを
論文中に書いたって、もちろん構わない。ただ、それは逃げではないか?
真の議論と向き合わず、先生が大事だといったからそう書いておこう、
君はどこかでそう思っていないかい?
自分の解くべきナゾとちゃんと向き合おう。過去をみて、未来を見る。

かくいう私も「温故知新」の意味をちゃんと理解したのは、30歳を迎えよう
とする頃であった。目と耳を使って情報を集めて、手を動かして、
はじめて何と向き合っているのかが分かる時もある。
だからこそ、私は2大ワードをNGと考えるのだ。

最後に私の知人の最近のつぶやきで締めたいと思う。

だってさ!! 書くことで分かることがあるということだ。

以上、卒論・修論の時期でもないのに、こんな記事をアップするのは、
毎年々々、卒論・修論が佳境に入ってから、この話題を思い出すから。
「そのアドバイス、もっと早くやって下さい!」と学生に言われるので、
早くやってみた。ちょっと早すぎ?
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